崖っぷちの活力 -Vファーレン長崎の残された望み-

J1第31節 サガン鳥栖 1-0 Vファーレン長崎

勝ち点差4の残留争い大一番。長崎が勝利すれば順位は変わらないものの、

残留争いの行方が全くわからなくなるということで、「九州ダービー」などと謳わなくとも注目が集まった。

 

大きなものが懸かった試合は選手たちの熱い気持ちが色濃く表れるもので、

序盤から互いのファウルの応酬が続き、木村主審を気の毒に思ったものである。

ファウルにより選手が感情的になる場面はあったし、出血した選手も二人いたが、

結果的に荒れた試合にはならなかったことは良かった。

 

小野と金崎を欠いた鳥栖はどうしても単調な攻撃が目立った。

個性の強いドリブラーがいてこそ攻撃のバリエーションが増えるが、

フェルナンドトーレスがいる辺りを目指したロングボールに可能性は見出せなかった。

先制点はチョドンゴンのヘディングをキーパーが弾いたところを原川が執念で押し込んだもの。

顔を蹴られながらの得点ということで、残留争いの意地のようなものが見られた場面であった。

 

長崎のGK増田は失点場面を悔やんでいるかもしれない。

一つ目のヘディングの弾き方によっては失点を免れられたかもしれないからだ。

2006年のACL決勝トーナメントで浦和がPK戦を戦うこととなり、

そこで当時のGK都築が見せたセーブのように(古すぎてごめんなさい)、

真上に弾いたボールがゴールをわずかに超えていれば失点は免れられた。

 

サッカーの結果は本当に少しの差であることを痛感した試合であった。

鳥栖のMVPはGK権田だろうか。ビッグセーブを2つ見せ、見事にチームを引き締めた。

序盤に口を切って血を流して治療に時間がかかったものの、その後に悪い影響はなかった。

ただ、相手選手に食ってかかりやすいところはあまり見たくないところである。

 

長崎はファンマが体を生かして起点になれていたし、澤田のボールの持ち方にはわくわくしたし、

バイスが直接FKを任されていることに驚いたし、中村のシュートはよく枠に飛んでいたし、

勝つ可能性は十分にあった。どちらに転ぶかという流れで鳥栖がうまく勝利を収めただけで、

例年見られるJ1最下位の脆さというものはみられなかった。

チャンスの場面でクロスのミスがあったり、ゴール前で迫力持って行ってほしいところで遅攻に持ち込んだりと

それなりにもったいないと感じるところはあったが、今年の残留争いの過酷さを象徴したような試合だった。

 

結果的に鳥栖が残留に1歩前進した。残り3試合。

長崎の現実的な残留方法は柏を抜いて17位に立ち、町田が自動昇格圏に入ることにより、

プレーオフに回って、そこでしっかり勝って残留を決めるという自力と他力の両方が必要になるものが最も現実的であるかもしれない。

 

残り3節の時点で最下位のクラブに残留の可能性が残されていることが普通でないのだが、

今季の何が起こるか分からないJリーグにおいて、長崎の残留条件は不可能ではない。

残りの全試合で選手たちは気持ちを全面に押し出すだろうし、チャンスの場面でサポーターは祈るだろうし、

世間的に注目は集まるし、長崎で普段サッカーを観ない人たちもこの時期は試合を観るだろう。

いろんな人のいろんな想いの込められた残り3節。

場合によっては次節にも降格が決まる。

 

長崎のサポーターにとっては胃の痛い一週間になるかもしれない。

ただ、サポーターがどのように過ごしても一週間という時間は変わらない。

同じ一週間を過ごすのならば、悲観するより、期待したほうがいい。




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